ひと足お先に行っていたバケーションも終わり、現実がやってきた。
早速バイトにも入っていて徐々に日常に戻りつつある。今回は、最近職場に新しく入ってきた男性スタッフにレディーファースト教育をしたって話。
正体不明
最近うちのバンケットチームに、アジア系と見られる男の子が入ってきた。
名前はインド系だけど、顔立ちは中国?韓国?モンゴル?なような印象を受ける。
英語はごく流暢。カナダ人のようには話さないものの、ん?となることのないストレスを感じずに聞き取れる話し方をする。
しかし、やや態度が大きいのであまり近づきたいとは思わず、何となく避けてきた。
そう思っていた中、仕事でペアワークに割当られてしまった。
仕方ない。仕事だったら当然やるしかないよね。
思ってもみないところからやっていていた
ところで、彼と話してみてビックリした。
メインの仕事を終えて後片付けをする時は、お客さんが目の前にいないので沢山話をする機会がある。いつもこの機会を狙って同僚と仲良くなろうと色んな話をするんだ。
話の中で、気になったので彼に「どこの国出身なの?」と聞いてみると、
「チベットだよ」と返答が来た。
チベット・・?
ああ、ネパールか。
ネパールに確かチベットがあったよね。と思い、
「ネパール・・・かな?じゃあ、○○と一緒だね」と言うと、
「いや、正式には独立してないけどチベットは国だと思っている。だから、オレはチベット人なんだよ。インドで難民申請してカナダに来たんだ」と彼が言った。
(あーーー・・・!)
むかーし、チベット難民ってものを学校で習ったことを思い出した。
何かいけないことを聞いちゃったかな。
軽率な聞き方をして悪かったと謝ると、彼は「全然気にしていないよ」と言ってくれた。大らかな性格であるらしい。ホッとした。
彼のバックグラウンド
彼曰く:
彼の家系は元はチベットから逃れてインドに住んでいて、その流れでカレッジもインドで出たんだってさ。
インドのカレッジでは授業は英語で行っているので、英語もできるらしい。
また、ホテルマネジメントを専攻していたのだそう。
カナダにはやってきて3年目で、他のホテルバイトと掛け持ちしてるとも言っていた。
どうりで色々とホテルの知識があるわけだ。
しかも、カナダ生活3年目にして、何の違和感も感じない英語を操るだなんてすごすぎる。
少し態度が大きいと感じたのは、恐らく母国語の表現が元になるからだということがわかった。えらそうに振る舞うわけでも、性格が格別横柄なわけでもないので、悪気があるわけではないようだ。
カナダにいる以上、こちらも彼の背景を受け入れることが大切となってくる。
というわけで、この日を堺に彼とちょくちょく話をするようになった。
彼に海外で必要なレディーファースト精神を教えることになった
最近、そんな彼に「レディーファースト精神」を教えることになった。
アジアでは男性優位社会で育つので、彼も無意識に自分が先に何かをしてしまったり、反対に譲るべき状況でも道を譲らなかったりすることがある。
そういったところを少し先輩の私が教育することになった。
例えば最近の話だとこれ。
彼と必要な備品を取りに行った。
備品をワゴンに載せて引っ張って移動する際、大先輩の女性がちょうど道を横切ろうとした。
ところが、自分が先に突っ切ろうとする。
それを「彼女に道を譲ろうね。北米ではレディーファーストが大切だし、そうでなくても彼女は大先輩でもあるから気をつけてね」と、やや言葉を選びながらも行動を改めさせる。
いかにもわざわざ譲ってあげるという振る舞いをするのではなく、あくまでナチュラルでさり気なく譲ることがスマートだ。大げさなレディーファーストは悪印象を与える可能性もあるので、気をつけるべきところ。ホテル業という職業である以上、彼にはTPOに併せて、その時々できちんと対応できるようになれなければならない。
うちのホテルには世界的な超VIPのお客様も多々来られるので、ふとした時に何かボロがでると非常にまずい。だから、普段から心がけを根本から変えていく必要があるのだ。
ちなみにこの場合では、同僚相手であることもあり「お先にどうぞ」と口に出す必要はなく、手でどうぞというジェスチャーをしてスマイルを浮かべる程度で良い。それで十分。
彼は素直に従おうとしてくれているので、そこは助かっているけれどね。
移民向けESLで見かけたシンプルなレディーファースト教育
ところで。
レディーファースト教育と言えば、移民向けESLに通っていた頃にこんなことがあった。
学校に登校する時、エントランスで中年のロシア人女性が同じく中年の中国人男性に何かを言っていることに気づいた。
罵っている?怒っている?怒鳴ってはいないものの、何となく雰囲気が悪そうだったので避けて通りたかった。
が、エントランスは必ず通る場所のため、嫌でも話が聞こえてくる。
二人は共に英語ビギナーであまり話せないようだったけど、
ロシア人女性がものすごくドスの聞いたトーンで、
明らかに不機嫌な表情をしながら、
ミーーファースト。
ユーセカンド。
ミーーファースト。
ユーセカンド。
と、繰り返し言っていた。
ロシア人特有の笑顔のない冷たい言い方。
分かる人にはわかってもらえると思うけれど、言われていない私でもドキッとするような言い方だった。
中国人男性はそこでようやく気づいたらしい。
ここカナダでは、自分よりも先に彼女を通らせてあげるべきだったということを。
そして、中国人男性が「Okay.. Okay...!」と言い、少し横にずれて場所を譲ると、
そのロシア人女性は「Good」と言い、凛とした表情で学校内へ入っていった。
中国人男性はやや気まずそうに笑っていた。
レディファーストを語るには、細かい説明や無駄なことは一切いらないのね。
って、これを私がしたらブチ切れられるだろうけど。
彼女のように、もうちょっと毅然とした態度で教育をせにゃあならんなぁ。
・・・とは思うけれど、現実はなかなか難しいですわ。