わりとよく話をしてくれた同僚の一人が突如職場から去っていた。
彼は本職はIT業で、ホテルには副業としてたまにバイトにやってきていた。
JAVAや仮想通貨やブロックチェーンがどうたらと色々興味深い話をしてくれる人で、またユーモアのある人だったので話自体も楽しかった。
彼が退社した理由
退社の理由?
どうも彼は退社時にセキュリティーチェックで引っかかってしまったらしい。
その日、彼は宴会で出した食べ物の残りを家に持ち帰っていた。
宴会で出した食べ物の残り物について
シェフからお許しが出れば、宴会場で出たフードで余った物は宴会後に食べても良いことになっているが、食品を持ち帰ってはいけないという職場のポリシーがある。
こういう規定ってだいたいどこのホテルでも同じなんじゃないかと思うけど、こっそり物を持ち帰る人ってなぜだか少なくない。
物によっては上からお許しが出れば話は別としても、食べ物の持ち帰りはやはり認められてはいないと思う。
仕方ないので、「こんなに捨てるのは勿体無いなぁー」と言いながら新人組数人で毎度大量に余った予備食を廃棄処分する。
ホームレスとかに寄付するのはどう?って思ったけど、食中毒への懸念なのかそういったことは許されないらしい。
ということで、味も美味しいことだし、何よりも廃棄処分では勿体無いからと家族やパートナーにお土産にしてあげたいって持ち帰る人々。
彼は機会があればいつもフードを持ち帰っていた人。
暗黙の了解
実は、彼は私にも「これ持って帰る?」と聞いてきたことがあった。
彼は持ち帰り行為自体を周りに隠してもいなかったような気がする。
それを見ても敢えて誰も言いつけないし、言いつけたところで周りから嫌われるだけなので辞めたほうが良いが、マネジメントにだって見てみないふりをする人もいそうな気がする。
が、ポリシーはポリシー。私はフードを持ち帰ったことはない。
セキュリティーチェック
暗黙の了解的なレベルで食べ物を持って帰る人はいた。
でも、さすがにセキュリティーに見つかってしまったら話は別だ。
セキュリティー部門は、たまに無作為に従業員の持ち物の中身をチェックする。
人によっては、ボーダーセキュリティーのようにかなり念入りに調べてくる人もいるらしい。
今のところ、私はまだどこのホテルでも一度もチェックをされたことはないけれど。
去っていった
しかし、彼は去っていった。
本業が別にあり、お金に困っていたわけではないので、単に職場への不満から辞めたのかもしれないと思っていた。
でも、そうじゃなかったみたい。
ムードメーカーでお調子者で、やや年下だけど頼れる兄貴分だった彼が辞めてしまっただなんて。
もうこの職場にやってこないだなんて。
よく彼に助けてもらっていた新人組は、私を含めてみんなその場で一瞬黙り込んだ。
悲しい。
嗚呼、持ち帰りさえしていなければ・・!
オーストラリアのホテル-即刻クビになった韓国人
フードを持ち帰ると言えば、オーストラリアのホテルで働いていた時にこんなことがあった。
韓国人の同僚がいきなりクビになった。
マネージャーから「ジョアンはクビにしたから、悪いけどどちらか明日ダブルシフトしてくれない?」と、同僚とともにいきなり聞かれたのを覚えている。
その衝撃たるや。
同僚は「いいけどなんで彼女クビになったの?」とその場で理由を聞き、マネージャーも理由をすぐにその場でハッキリと言っていた。
余談
これは余談。
オーストラリア人はダイレクトなので、感情をそのまま態度や言葉の表現に出す傾向がある。
というわけで、かなりストレートなやりとりを日々目の当たりにしていた。
オーストラリアで生活してからカナダにやってくる人は、カナダ人が良くも悪くもやや日本人ぽいところに驚くんじゃないかと思う。
話は戻って。
そのクビになった韓国女性は、韓国ではライフセーバーをしていたというモロ体育会系で、おおらかな性格と豪快に笑うところが好きだった。
まだ出会って数ヶ月だったけど、彼女と仲良く出来たらいいなぁなんて思っていた。
なのに。
彼女は、食堂から「食パン一斤」を持ち出したところを、帰り際にセキュリティーチェックに見つかったということだった。
即時解雇となったそうだ。
$2.6の食パン一斤を盗んだことで解雇
その食パンは、12×12×30センチほどの大きさで、8ミリくらいづつ薄くスライスされていた。
当時スーパーで$2.6だとかで、$3はいかなかったんじゃないかと思う。
スタッフ用の賄いパンなので、お客様に出すための高級なホテル食パンでも何でもなく、微妙にイーストの味がするだけの味気ない白い食パンだった。
食堂から新品の食べ物を勝手に持ち帰るだなんて、明らかな盗み行為で許されることではない。
でも、たった一斤の食パンを盗んでクビになってしまうだなんて。
おわりに
今回、今の職場から同僚が突然いなくなった事件でこの時の話を思い出した。
こういう理由で職場を離れていく人がいるだなんて胸が締め付けられる。
いや、彼は本業が忙しくて辞めたんだ。きっとそうだと信じたい。
ホテルバイトの話はこういうのもあります: