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カナダと日本と韓国と、たまにオーストラリア。人生真っ盛りという意識で生活したい

ちょこっとバイトしていたローカルテレビ局での話

学生時代にちょこっとバイトしていたローカルテレビ局での話。

 学生時代に短期でテレビ局でバイトしていたことがある。春休みかなんかだっだと思う。知り合いに誘われたので、ただのミーハー心から軽い気持ちで働かせてもらった良い経験だ。お笑い芸人が見られるとのことで、バラエティー番組好きの私は二つ返事でOKした。

 

そのローカル局内のスタッフたちは和気あいあいとしていた。テレビの中でしか見たことのないアナウンサーさんってお高く留まっているのかな?と思いきや、意外にもただのバイトとも気さくに話をしてくれる人がほとんどだった。

そんな感じなので、選挙特番でもない限り殺気立つことはなく、普段は収録の準備だとか後片付けもみんなで協力していく雰囲気があった(とバイトには見えた)。

自分はアシスタントのアシスタントみたいなバイトだったので、特にやることがなく、スタッフさんへ手助けにもならない手助けをするのが仕事だった。

 

 

 

芸能人のこと。

私はバラエティー系の番組しか知らないけれど、大御所と言われるようなお笑い芸人さんたちはサービス精神溢れる人が多かった。スタジオ内の雰囲気を良くさせるためかな。出てくる瞬間に歌を歌いながら現れたり、撮影をしていないのに面白いスモールトークをしてくれたりしていた。愚痴をも笑いに変えるので何を聞いていても楽しく、芸人がモテるというのはこういうところにあるかもしれないと思った。

 

 

その日は、とある番組の収録でバイトに出ていた。

出演者は局のアナウンサーさんと、お笑い芸人さん数人と、綺麗どころとして某アイドルがやってきていた。

 テレビ番組のイラスト

そして、リハーサル。

自分はただのミーハーなので、お笑い芸人さんや可愛いアイドルを見かける度に喜んでいた。観客を入れない撮影だったけど、お笑い番組ということで、思いっきり笑って良いと言われていた。スタッフが笑うってことは本物だから、大いにウェルカムだということだった。なので、素人な私も混ざって豪快に笑いまくる。面白いんだもん。

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リハ終了の後はしばらく休憩を挟んだ。

本番前最後の確認をしていたり、演者さんたちは一旦控室に戻ったりしている。

一方、私はというと特にやることがなく、足りなくなるかもしれない予備備品を取りに行ったり、色を確認するためにカメラテストのモデルになったりした後は暇になってしまった。

「見てて良いよ」と優しく言ってくれる先輩スタッフさんたち。邪魔するわけにもいかないので、言葉に甘えさせてもらうことにして、ただの見学者状態になった。

 

しばらくして、とあるスタッフさんに頼まれてジュースを買いに行くことになった。

とは言っても外まで買いに出るわけではなく、スタジオを出てすぐの廊下にある自販機だ。

 

大きい局ではないのですぐの距離である。

 

合計で何本買ったか忘れてしまったけど、最後に買った缶ジュースを取り出し口から出す時に手が滑ってしまい、缶ジュースが1つコロコロと転がっていってしまった。

 

追いかけて行き、それを拾おうとすると、突然視界が何かによって遮られた。

何だろう?と思い見てみると、目の前に細い女性の脚が2本見える。

 

 

見上げると、某アイドルがそこに立っていた。

 

 

彼女は、無表情で私のことを見降ろしている。

 

見降ろしている彼女に、見上げている私なわけで、互いに目がバチっと一瞬合った。

 

 

この某アイドルは当時女性の敵だとか言われていたようだけど、自分が可愛い子が好きなのと、単純なミーハー心から(おおぉ!)と興奮してしまう。

 

そんな、沸き上がってくる興奮と同時に(早くどかなくちゃ!)と焦ったわけだけど、

 

 

私の移動を待ってくれることなどなく、某アイドルがこう言った。

 

 

「ジャマ・・」

 

 

可愛くて甲高いテレビで観かけるあの声だけど、言葉から殺気を感じるような、信じられないほど冷たく低いトーンだった。

 

(えっ?!?!?!)

 

「テレビの中で演じているからこそ演者さんなんだ」という話は聞いていたけれど、彼女に関してはあまりのギャップに驚いてしまった。

なぜだかもう一度彼女を見てしまい、怪訝な表情が凍り付いているのを見て、自分も固まってしまった。

 

道を開けるべきだというのは当然わかっている。だけど、衝撃が強すぎてフリーズしてしまったんだ。今はダメ!って時に限って、音も立てずに固まってしまうパソコンみたいに。

 

 

すると彼女は、相当イラッとした表情で、

 

 

チッ

 

 

と、小さく舌打ちしてから去っていった。

 

 

咄嗟に「ごめんなさい!」と大きめの声で頭を下げながら謝ったけれど、陳腐な言葉は彼女の耳には入っていないようだった。

 

後姿だけでも怒りを感じることができる、恐ろしい戦闘値の持ち主だった。

 

その衝撃たるや。

 

 

 

多分、この某アイドルのことが結構好きだったんだと思う。学校でモノマネしたり、ハズレの合コンではジャンケンで負けた子がキャラになりきって遊んでいたこともあったし。

 

演者様に道を譲るべきだというのは当然だしわかっている。申し訳ないと思ったからそういった表情は出ていたと思うし、もちろん謝りもした。

加えて、そこの廊下は結構広かった。余裕で7,8人は横に並んで歩ける横幅で、すぐ目の前はちょっとした休憩スペースのようになっていて広い場所だった。

だから、自販機がいくつか置いてあったんだ。

 

 

でも、許してくれないのね?

 

ただの短期バイトなんて、ファンの延長線上にいるけどね?

 

怖かったよ。

 

確かに、可愛いキャラでありながら、雑誌のインタービューで好きなブランドを「シャネル」と答えていた時点で、結構な違和感を感じてはいたけれど。

 

自分のせいで、もしかして彼女の機嫌を損なってしまっていたらどうしよう・・とヒヤヒヤした。

 

 

 

 

スタジオに戻ると、スタッフの1人が「何かあった?」と聞いてきてくれた。

 

彼女が去っていた後しばし茫然としてしまい、結構な時間を無駄にしてしまっていたのかもしれない。

 

ジュースを数人に渡しながら今あったことを話すと、誰も驚かない様子で、

 

1人が「あぁ、あいつはサイボーグって言われてるからさ」と、まるで「ご飯食べる?」「うん」みたいな、ごくありきたりな会話のように返事をした。

 

言葉を失う私に、「そんなもんだよ」「え、知らなかったの?」と、むしろ私の反応に驚いている様子のスタッフさんたち。

 

ひぃぃぃぃぃ~~Σ(゚∀゚ノ)ノ

 

バイトにはなかなか刺激の強い世界だわね。

 

 

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本番スタート。

 

某アイドルは、テレビに映っていない時は明らかにつまらなさそうな顔をしているのに、カメラが寄ると天然発言連発でスタジオを大いに沸かせていた。

 

良い仕事をしている・・・!

 

サイボーグだと散々言っていたスタッフたちも、彼女の可愛い無垢発言に大笑い。私も笑ったけれど、先の衝撃で心からは笑えず大笑いにはならなかった。

 

唯一、私以外ではアナウンサーさんが某アイドルの動きに戸惑っていた。急変を繰り返す彼女の表情と態度に、どう接すれば良いのかわからないといった困惑の表情をしていた。臨機応変にしっかりと進行していかなければいけない、大変な職業だ。

 

VTRがスタートすると某アイドルは、またつまらなそうな表情で髪の毛を触りながら、ため息をついたりあくびをしたり、さらには足をブラブラさせて遊ぶなど、退屈サインフルコースである。

 

なのにも関わらず、VTRが終わるとパッと可愛い天然発言の一言がまた出る。

 

「一種の才能なんだろうなぁ。」

 

そんな言葉が自然と出てきた。

 

番組が終わる頃には、彼女のことが天才に限りなく近いような尊い存在に見えてきた。収録中の彼女を通して、処世術を1ナノグラムほど学べたような気がする。

 

今ではママタレントとして、すっかりキャラ変に成功したように見える彼女。やはり芸能界で生き残っていくのには、ただの天然な可愛い女の子ではダメなのだなぁと思うのである。